2021.12.03
ある日僕は、ふと九谷焼の職人工房を訪れた事があった。
何気なく入ったその工房には年老いた熟練職人がいて、展示されている彼の作品を、ひとつひとつ丁寧に説明しながら見せてくれた。その作品は、情熱的でありながらとても温かみのあるやさしい顔をしていて、同じ種類の作品でも、形も色も少しずつ微妙に趣が違い不均一なモノであった。おそらくそれは作り出したその熟練職人の、その時の感情や偶然、計算も含めて様々な要因によるものなのだろう。
そしてその時僕は、自身の人生を見つめ直す重大なあることに気が付いた。ここにある作品たちは、どれも世界にたった一つしかない唯一無二の作品なのだという事に。そう思うと、欲しくて、欲しくてどうしようもなくなってしまい、同じ種類の湯呑(と言っても、みんなそれぞれ違う顔をしているのだけれど)6個を、とてつもなく長い時間をかけて選び出した。この時の一期一会の作品選びの喜びを、今でも忘れる事は出来ない。
残念ながら現代のモノづくりの多くは、これとは真逆の寸分も狂いのない画一的なモノが求められているように思う。自然の恵みである農作物でさえ、規格外のモノは敬遠されてしまう。そしてかく言う僕も、「自分たちの信じるモノだけを」と 謳い魂を込めて世に送り出している「BJ CLASSIC COLLECTION」さえも、そうでなければならないものだと思い込んでいた。あの偶然の九谷焼職人との出会いまでは。
そして僕は、呪縛から解き放たれた。今シリーズのテーマは一期一会の「不均一」。
僕らの生み出した作品が、あなたの唯一無二の存在になる事を切に願う。