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OWNER'S ESSAY

by Ken Hamada

2020.06.11

REVIVAL EDITION『JAZZ』〜35年の時を超えて〜

 

僕が学生だった80年代半ば、あこがれの大人たちは皆こぞってサブカルチャーを語ってくれた。その中でも好きだったのは、アンディー・ウォーホル、 アレン・ギンズバーグ、そしてジャズピアニストのビル・エヴァンス。

 

当時、体質的にコンタクトが合わず、眼鏡を掛けることに対してコンプレックスを感じていた僕には、それをカッコよく着こなしている彼らはまさにヒーローだった。特に、ビル・エヴァンスの眼鏡「JAZZ」に憧れ、似たモノを探し出して掛けていた。その頃から眼鏡に対するコンプレックスは無くなったように記憶している。

 

それから15年の時が経ち、僕は世界最古の眼鏡メーカーAmerican Optical日本総代理店であるブロスジャパン㈱を立ち上げる事となる。当時憧れの彼らが掛けていた眼鏡の多くがAmerican Optical社製だった事を後になって知り、運命を感じずにはいられなかった。

そしていつか僕の想い通りのモノづくりができるようになれた暁には、単なる見た目だけではない “本物の眼鏡” を復刻したいと思った。

 

なめらかな肌触りでバネ性に富み変形しにくいセルロイド製、細部まで手の込んだ各部品の繊細さ、限りなく極限まで削り込んだ華奢なテンプル(耳掛け部分)等々、今の機械化された工場生産では再現できない職人技をふんだんに駆使した復刻だ。

 

さらに、単なるモノづくりの枠を超え、彼らの哲学や時代のカルチャーまでをも表現するためには、当時のアメリカのモノづくりの “大雑把” な部分さえも敢えて再現しなければならない事も確信していた。(例えば今の日本の職人は、フロントとテンプルの接合部分は1/1000mm単位で繊細に擦り合わせて揃えるが、当時のアメリカ製では数ミリくらい飛び出して左右もばらついている。)

 

自分の技術のみを信じて作品を生み出す誇り高き職人達は、はたしてそれを理解してくれるだろうか? そこまで深く入り込んで作り出す作品を、市場は受け入れてくれるだろうか? 不安で挫けそうになりながら募る思いは年月と共に膨らんでいった。

 

そして今、35年の時を超えて僕のモノづくりも何とか形になってきたと自負している。思い入れの深かった「JAZZ」を当時のままに復刻することが出来た。

 

 

 

●ARBAN「ビル・エヴァンスのメガネ」を復刻販売
https://www.arban-mag.com/article/34820

 

●Begin ジャズ界の巨匠ビル・エヴァンスが掛けていた眼鏡が今季待望の復刻!!
https://www.e-begin.jp/article/105915/

 

 

 

職人たちは、高度な手間のかかる技術はもちろん、懸念していた当時のアメリカ的な大雑把なバラツキさえも、寸分の狂いもなく再現してくれている。

魂が注がれ、眼鏡がモノではなく作品へと昇華したのだ。職人たちの技術の精度と反骨精神には感謝しかない。

 

まさに、このREVIVAL EDITION「JAZZ」は35年間の、僕の貫いてきた魂と哲学の集大成だと思う。是非手に取って頂き、職人たちの思いと時代を超えた息吹を感じて頂きたい。

 

 

REVIVAL EDITION「JAZZ」こちらより